警察学校初任部初任班教官














警部補 安沢さとみさん(現警察本部総務部総務課勤務)

「10年先でも、あの時教わって良かったと言ってもらえるように、今伝える」
北海道の警察官になるためには、採用試験を経て真駒内にある警察学校へ全員入校します。警察学校って全寮制なんですって。その警察学校で教官をしている安沢さとみさん(35歳)にお話を伺います。

yumetan_s
安沢教官、よろしくお願いいたします!
安沢教官の現在のお仕事はどんな内容ですか?  初任科187期2班(37人)の担当教官をしていて、教えている教科は、犯罪防止や少年非行防止、経済事犯など生活安全警察についてです。犯罪にはどんなケースがあるのか、容疑者や被害者にどう接していくことが大切か、そして事件処理という仕事の内容、手順、書類の作成、などの実務について教えています。試験もありますから、試験問題を作ったり提出物の添削をしたり、中学や高校の先生のような部分もありますね。また、女性の生活指導も担当しています。

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生活指導とはどんなことですか?
現在、学校に在籍している初任科警察官は312名、うち女性は27名です(平成19年8月現在)。社会的に、男女平等で女性の社会進出もあたりまえになってきました。警察の中での女性警察官も必要とされているのですが、人数的にはまだまだ少ないのです。だからこそ、女性警察官と男性警察官が力を合わせられるよう、言葉遣いや、思いやりなど、生活態度について指導します。男性教官は男性の生活指導をしています。4年制大学卒業者は6ヶ月、それ以外の学生は10ヶ月の期間、警察学校で生活態度や心の持ちよう、警察官として実務につくための知識や訓練を寮生活をしながら学びます。長いようであっという間。警察官の原点となる場所です。

yumetan_s
なんだか厳しそうですね。
そうですねー。「安沢教官は細かい、厳しい」とよく言われますね。細かいことにもちゃんと意味があります。私生活では、自分の部屋があって、携帯電話も持っていて、自分の時間を自分の都合で好きなように生活していますよね。掃除だってやろうがやるまいが自由です。好きな人とだけ話す、誰とも話さなくたっていいですよね。しかし、警察学校の寮生活は共同生活です。お互いが分かり合うために自分の気持ちを言葉で相手に伝えなくてはなりません。対人関係を大切にするためにルールがあります。仕事も同じ。ぞうきんの絞り方にはじまり、印鑑はまっすぐ押す、書類の束は角をきっちりそろえて留める。そこまでうるさく言っています。それが仕事の基本です。

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印鑑の押し方や書類の扱いといった、ひとつひとつのことが、社会生活の基本だと教えているのですね。安沢教官はなぜ警察官になろうと思ったのですか。
実は……覚えてないんです。忘れちゃいました。でも、中学生のときには「警察官になるんだ」って思ってましたね。  中学時代はバスケ部に入って中体連にむけて練習に打ち込んでいました。メンバーがとってもよくて、仲間はずれもなくて、恵まれていました。実はそのころ「何でも1番がいい!」と思っていて、勉強でも走ることでもなんでも1番をめざしていました。ところが……高校に行ったら、1番になれなくなっちゃった。いくら頑張っても私は普通。そのうち、「これだけやれた、頑張った。1番になれなくても自分で納得ができればいいんだ」と思えるようになりました。

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警察官になってからはどのような仕事を担当されてきたのですか?
まず、交番勤務を2年。中央警察署では少年係として少年犯罪や薬物事件を担当。その後、道警本部で薬物事件捜査を担当、そして平成17年に警察学校に配属となりました。

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仕事に対する考え方はどのように変わりましたか?
そうですね、これまでは少年犯罪者や暴力団等、事件を起こした人、そして被害にあった方に接する仕事をしてきましたが、警察学校の教官となると、主に接する学生たちは犯罪経験のない、事件に巻き込まれたという経験もないのがほとんどです。事件として表面化しなかった事例も含めて、犯罪はどうして起きるのか、犯罪を犯した人、被害にあった人、それらの様々な背景も理解して、思いやりある行動のできる警察官になることが大切です。理解や納得を得られることが10年先になってもいい、今伝えられることを伝えておかなくては、という思いでいます

yumetan_s
教官になってから印象的な出来事にはどんなことがありましたか?
教官として3年目になるのですが、初めての教え子から、「教官に教わったことは正しかった、教わっていてよかった。」という言葉を赴任先からもらったときはとても感動しました。私の教えてきたこと、言い続けてきたことは間違っていなかったという気持ちと、これからも教官という仕事をしっかりやっていこうと改めて思いました。  警察に限らず、実際に現場で直面しないと理解できないことは山ほどあります。仕事は現場で覚えるものなのですが、事前に知識として、心構えとして知っているのと、なんにも知らずに飛び込むのとではまったく結果が違います。なので、また警察学校へ再入校で帰ってきたときに現場でどうだったかという話を聞くことが楽しみです。

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一度卒業した警察学校にまた戻ってくるシステムがあるのですか?
原則的に全員2回入校するんですよ。採用決定後、まず初任科生として6ヶ月~10ヶ月入校し、その後3~4ヶ月後に初任補修科生として2ヶ月ほど再入校します。 北海道の警察学校の特色は幹部学生との合同授業があることです。道警では昇任する度に受ける研修も警察学校で寮生活をしながら実施されますので、未来の上司や部下との出会いや、昇任した父親の警察官とその子どもが学校で一緒になるなんてこともありますよ。他県では初任科研修と昇任後の研修では学ぶ施設が違うので、道警ならではの存在感が警察学校にはありますね。

yumetan_s
警察学校っていろいろなドラマがありそうな所ですね。 教官が仕事で気を付けていることや大切にしていることはありますか?
警察官は人前で話ができないと仕事になりません。職務質問、事情聴取。コミュニケーションの上に仕事が成り立っています。コミュニケーションは自分の思いを相手に伝えることから始まります。ですから、学校でお誕生日を迎えた人には、みんなの前で○○歳の誓いをしてもらっています。  教官になる前は24時間、警察官としての緊張感の中で仕事をしてきました。今は、大切なことは何か、警察官の原点を生徒に伝えています。教わって良かったと言われるのが10年先になってもかまわないから、しっかり教えていきたいと思っています。

yumetan_s
子どもたちへのメッセージをいただけますか?
世の中にはいろいろな犯罪があります。なぜその犯罪が起きたのか、原因に思いをはせて欲しいと思います。例えば、家庭内のトラブルが犯罪の契機になったとして、家族はそれぞれどんな心理状況にあってどんな生活環境なのか、犯罪を犯してしまった人はどういう思いだったかなど、考えてみて下さい。また、犯罪を犯してしまった人、被害にあった人のこれからの生き方を見守る心も持って欲しいですね。  社会に出て仕事をしていく上で必要なのは相手を思いやること。相手の立場になって考えることができることです。そして学生のうちに、なにかひとつ、とことん打ち込める大好きなことを見つけて欲しいなと思います。

yumetan_s
事件に関する報道は、ついつい聞き流してしまいますが、原因はなんだろうと考えてみることは、相手の立場を考えるきっかけになるだけでなく、事件に遭遇しないようにするヒントも得られるのかもしれないですね。安沢教官、貴重なお話をありがとうございました

【編集後記】
 警察学校はなぜ集団生活、寮生活をしているのか。それは、警察官自身の生活態度から、気遣い、心遣い、思いやりの行動を見直していたのですね。防犯活動から事件解決まで、道民が安全に暮らせるように、様々な人間関係の中に入り込んで仕事をする警察官には対人力が必要とされることがひしひしと伝わってきました。教官の安沢さとみさん。穏やかな口調からも広い視野、深い心、熱い思いを感じました。どんな分野でも、先生と呼ばれる人の思いを生徒が現実に受け止めるには時差があるのですね。(あきたん)